埼玉県郷土史

大正15年9月20日発行
著者:鯨井寅松
国立国会図書館デジタルコレクション永続的識別子:
info:ndljp/pid/924862

聖代の恩沢と県人の覚悟

大正天皇
大正天皇

今上天皇は東宮にまします頃より屡々我が県に玉歩を運ばせられ、廿七年には南埼玉、北葛飾両郡の南部で数日の間遊猟をなされ、廿九年には氷川神社に詣でゝ社頭の好処に親しく松を植えさせられ、三十九年には山水明媚なる荒川の上流で鮎猟を御覧ぜられ、四十一年には南埼玉郡大袋村に鴨場を設けられて殆ど毎歳の御遊猟あり、大正元年の秋特別大演習を川越附近に行はせられるや川越中學校を大本営として一週間御滞在遊ばされた。

我が県は其の位置帝都に近きを以て文物の流入頗る早く、稍もすれば新奇を好み華奢に耽り所謂関東武士の気風は減少するの傾向を生じて来た。これ吾人の大いに嘆ずる所であって今後の県人は常に精神の修養と身体の鍛錬とに努めて,華を去り実に就くの心掛が必要である。これやがて小にしては県下の名誉をあげ大にしては帝國の光輝を海外に発揚して聖恩の萬分の一に酬ゆる所以となるのである。

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