埼玉県郷土史

大正15年9月20日発行
著者:鯨井寅松
国立国会図書館デジタルコレクション永続的識別子:
info:ndljp/pid/924862

千熊長彦

第十四代仲哀天皇の御代に神功皇后は遥る新羅征伐をなされて大に國威を海外に輝かされたから、新羅王は威風に恐れて直に降參し、次で百済も高麗も朝貢するに至った。ところが応神天皇の御代になって百済も新羅も入貢しない。それ許りでなく新羅は百済の使を脅かして貢物を横取りすることがわかった。天皇は大にお怒りになり直に武蔵國の出身で当時勇将と伝へられた干熊長彦を態々朝鮮にお遣はしになり、新羅の横暴を攻むると共に、百済王をして、自今以後千秋萬歳絶ゆることなく貢物を奉ることを誓はせた。此後再び長彦は勅を受けて朝鮮に渡り、百済王をして、貴國の御恩は大地よりも重く終生忘れず永く臣下となって二心を抱かないと言はしめた。長彦の如きは、貴に隠れたる勇士である。

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